COLUMN
Whatever SHIMOGAMOの入居者様が日々どのような挑戦や活躍をしているのかご紹介していくこの企画。今回は第一弾!として京都大学の教員でご入居されている大学 ICT 推進協議会(AXIES) を事務局長代行として兼務されている喜多一先生にお話を伺いました。
現代社会では、情報通信技術(ICT)の重要性がますます高まっています。本日ご紹介する大学ICT推進協議会は、その最前線で大学の教育と研究を情報通信技術で支えを結びつけ、未来を切り拓くための活動を行っています。
未来を築くICTの力 ─喜多先生と大学間連携の挑戦
─ まず最初に喜多先生のキャリアについてお伺いしてもよろしいでしょうか。
はい。僕はもともと京都大学の電気工学科にいたんですが正直、ハードウェアにはあまり興味がありませんでした。「”形のないもの」”に魅力を感じていたのかもしれません。そこでシステム工学に興味を持ち出すようになりました。また学科内のLAN 整備のお手伝いでケーブルを持って学科内を走り回っていたことから、京大の学内のネットワークの更新委員会へ強制的に入らされたんです。(笑)
その後、東京工業大学に移動してネットワークの授業を担当したり、そしてその後大学評価・学位授与機構(現在は大学改革支援・学位授与機構)に移り、大学を評価するために経営についても学びました。そうするうちに「京大がIT基盤するのに人が足りない!帰ってきて!」と声をかけられて京大へ戻ることとなりました。 その頃は世の中でe-ラーニングが動き出していたタイミングでしたが、京都大学ではまだまだでしたね。そのような中でAXIESについては立ち上げから関わり、ご縁で現在は事務局のお手伝いもしています。
─ 喜多先生の全ての経験が繋がったような印象を受けました。現在活動されている大学ICT推進協議会がどのようにして設立されたのかお伺いしたいです。
私が2003年に京大に戻ったころ 12 の国立大学が参加する国立大学情報教育センター協議会が文部科学省の要請もあり情報教育に関する研究集会を毎年、輪番で開催していました。ところが 2004 年に国立大学が法人化され、研究集会への文部科学省の支援がなくなり開催がしだいに難しくなってきました。
そこで、研究集会を継続するための新しい組織づくりを模索していたのですが、丁度米国に大学IT連携組織として EDUCAUSE があると紹介され、その「日本版」の組織を作ろうじゃないかということで有志で検討を始め 2010年12月に大学ICT推進協議会を設立することになりました。
設立されたときは大学など 15 の組織の参加でした。会費は10万円だったので運営費はたった150万円しかありませんでした。しかし、徐々に参加大学や企業が増えて、現在では182大学と97社が参加しています。皆が集まってくれることによって情報とリソースの共有が進み、大学の ICT について考えるコミュニティとして育って来ました。
─ オフィスとしてWhatever SHIMOGAMOを選んでいただいた決め手はありましたか?
設立時は AXIES のオフィスは九州大学内に、その後、京都大学内に置かれていましたが、組織の活動が拡大する中で事務局を大学の外部に設置することが必要になりました。前の事務局長がいくつかの場所を探してくれて、結局ここを選びました。オフィスもお洒落でいい感じの場所ですよね。京都大学も近いので AXIES の活動も行いやすいです。ご入居されている方々との交流も新鮮です。
─ お話が戻りますがICTが大学教育や研究にどのように影響を与えていると思いますか?
ICTは大学教育や研究に大きな影響を与えています。ただ、そのためには、大学間の横の繋がりや、研究者同士の連携、企業との連携を一層強めて行かないといけない。よりオープンな場で様々なことを試みられるとよいと思います。
─ 今後5年から10年で、大学教育におけるICTの役割はどのように進化すると予測していますか?
2020年の新型コロナウィルス感染症のパンデミックでオンライン授業が急速に普及しましたね。大学はいろんな意味で準備はしていたので小中高は休校となる中、オンライン授業に切り替えるなどをして乗り切れた感じがありました。
これをきっかけに、教育現場は急速にICTを取り入れることの理解が進み、さまざな技術の利用が加速した感じはありました。もちろん今後も対面での授業とともにオンライン教育も併用される中で、新しい技術の導入が進むと考えています。特に最近話題の生成AIの発展は、教育現場に大きな影響を与えるでしょうね。
─ 喜多先生がこの仕事の中で最もやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?
やりがいですか。そうですね、、ICT の環境整備をする僕たちは所詮「お弁当箱」を用意しているだけに過ぎないんです。そこに実際の教育や研究活動をご飯やおかずとして入れてくれないとお弁当箱として成り立たちません。
そしてシステム障害などでお弁当箱が機能しなくなった時に入れ物の大事さに気が付かれることが多いのですが、日々の業務で大学のパソコンや情報システムが正常に動いていることが当たり前とされている中で、褒めてくださるのは同業の人たちだけですね。よくこれでこんなによく動いてるね!と。嬉しいです(笑)
─ 縁の下の力持ち的な役割をされているんですね。I CT推進協議会、喜多先生の個人的なことでも構いません。最後に今後の目標について教えていただけますか。
日本の課題である人口減少や経済成長の停滞に対して、ICTを活用して大学の活動の効率的な運営を目指さないといけないと思っています。少ないリソースでより多くのことを成し遂げるために、技術の進化を取り入れ、大学教育をよりよいものにできたらと思います。
また、学生の皆さんにはあまり理解されていませんが、大学の先生方はフィールドワークの方が好きだったり、大学の外でも様々な活動をしていますし話かけられると嬉しいもんだったりします。学生にはその姿を知ってもらい、先生方にどんどん話しかけてほしいと思いますね。
そういう中で、学生さんには今回のパンデミックの時のように何かあってからではなく、日々の生活の中で常に課題を「意識して探して」ほしい。そんなことを繰り返し、色々な事を発見してほしいです。そしてそれをある程度、学べる。試せる。そんな環境を僕たちが整えてあげていけたらいいですね。
終始ニコニコと穏やかに気さくに話をしてくださった喜多先生。同じような多くの先生方の協力が AXIES の活動を支えていることが感じられました。AXIES の活動で日本の大学教育がますます豊かになってゆけばと期待しています。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
大学ICT推進協議会からのお知らせ
大学ICT推進協議会では、SARTRASの共通目的基金の助成を受けて、教育機関向けの著作権教材を制作し、無償で公開しています。現在「著作権問題」について取り上げた教材を公開中です。
学生向け動画教材「基礎から学ぶ著作権」
ニュースでも頻繁に取り上げられる「著作権問題」。よく聞く言葉ではあっても、意外とその詳細は知られていないことも多いのではないでしょうか。インターネットの利用が進む中で、著作物の利用は、大学での授業だけでなくSNSへの投稿など私たちの日常生活のさまざまな場面で行われています。
この動画教材は、著作権制度について基礎からわかりやすく学んでもらうことを目指して制作されました。
教師向けの著作権ガイド
また、教育機関で授業をされている先生方に向けて、著作権の基本的な知識や、授業で著作物を取り扱う際にできること、できないこと、気をつけなければならないことについて解説した冊子も配布しています。
こちらの教材は日本語版と英語版がそれぞれPDF形式とウェブブラウザで直接閲覧できる形式で提供されています。以下のリンクからアクセスして、ぜひご利用ください。
https://axies.jp/report/copyright_education/
もちろん、この教材は教育現場だけでなく個人の誰でも見ることができます。大学ICT推進協議会の活動が、さまざまな場所で多くの方々にお役に立てることを願っています。
【Whatever SHIMOGAMO】 都市の喧騒を離れ、自然の溢れる環境の中で自分らしく新しい働き方を 詳しくはこちらの公式サイトよりご覧ください。 ワットエバー株式会社 〒606-0802 京都市左京区下鴨宮崎町119-1 TEL 075-706-1133 |