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【Whatever SHIMOGAMO入居者紹介】 株式会社DML 西尾 守史(にしお もりふみ)
2024.3.28
Whatever SHIMOGAMO入居者紹介 株式会社DML 代表取締役社長兼CEO 西尾守史(にしお もりふみ)
Whatever Shimogamoの入居者様を紹介しております。
本記事では、株式会社DML及び立命館大学デザイン科学研究センターの
西尾 守史(にしお もりふみ)さんを紹介します。
幼少から大学時代
西尾さんは、京都府京都市桂出身です。中学では広島に行ったり、高校では名古屋に行ったりと幼少のころから国内を転々としていましたが、京都に拠点を構えて生活を送っていました。
大学ではアメリカのサンフランシスコにある Academy of art university(https://www.academyart.edu/)に入学し、広告やファインアートを勉強しました。3年ほど勉学に励んだ西尾さんでしたが、なんと卒業間近で大学を中退し、日本に帰国したのです。その理由は、会いたい人の会社に入るためというものでした。当然のことながら、この行動のために西尾さんは、親戚や両親からあっけにとられ総すかんを食らいました。
そこまでして西尾さんが会いたかった人とは、、、ファッションデザイナーのヨウジヤマモトです。(https://www.yohjiyamamoto.co.jp/)
ヨウジヤマモトでの生活
西尾さんは帰国後、英語を話すことができたためヨウジヤマモトの青山本店に配属され、三年ほどアパレル店員として働いていました。青山本店には、山本耀司さんは月に一回訪れるようにしていました。青山本店に耀司さんがいらした際に、西尾さんは耀司さんに挨拶し、お話をしました。そして、彼の考え方に共鳴したのです。
それからは、西尾さんは月に一回ほど喫茶店やディナーにご一緒し、会話を重ねていきました。そのとき、耀司さんと話したデザインやアートのことが、今の西尾さんの思想の原点になっています。耀司さんは常に西尾さんにこう問いかけていたそうです。
「西尾から見て社会はどう見えるか?」
さらに、耀司さんは「社会に対して言いたいことがあるのならば言い続けることが大切だ。」とおっしゃったそうです。この問いかけを、今も西尾さんはご自身に問い続けているのです。
コーポレートコミュニケーション
青山本店に勤めて三年たって、「やはり洋服が好きじゃなかった」という理由でヨウジヤマモトを退職しました。退職の際には、耀司さんから「なんでやめるの?」と尋ねられ、「やりたいことあるので。」と答えたそうです。笑
退職後しばらくは翻訳などのアルバイトを行い、その後、株式会社ファイブ・シーズ(”https://www.fivecs.co.jp/“)に入社しました。ファイブ・シーズ社は企業のIRの作成などコーポレートコミュニケーション支援を全般に行う会社ですが、西尾さんは英語ができたからという理由で入社しました。
英会話スキルを活かして、外国人のライターの方にライティングのディレクションを行い、コーポレートコミュニケーションにおけるメディア運用などを行いました。ファイブ・シーズ社はコーポレートに関する情報発信を請け負っていたため、西尾さんは日本の経済や広報・広告の仕組み、製品やサービスをつくる経験や知識、メディア運用経験を身に着けました。
しかし、ファイブ・シーズ社に属しながら、西尾さんはこう思います。
「これだけじゃだめやなあ。」と。
PRというものは、日本ではプロモーションの意味で使われますが、英語ではパブリックリレーションズを指す言葉です。ファイブ・シーズ社で働く中で、自分がやっていることはただ一過性のものになっているのではないか、「社会と企業の関係性構築」において何をすればいいのかと考えるようになりました。
思考に思考を重ねる日々。そんな中ついに、デザインという考え方に帰結したのです。ヨウジヤマモトとの会話の中で、自身の内に築かれていたデザインの視点から物を考えるという考え方です。今までの人生で、無意識に学んできたこと、体系的に整理していたことに気づいて、自分の中でつながった瞬間でした。
立命館大学・DMLとの出会い
それからは、「社会は自分にとってどう見えるか。」という問いを問い続ける日々でした。そんな中、現在の株式会社DML・COOの宮崎聡さんと立命館大学・経営企画室長の八重樫教授に出会いました。八重樫教授は、立命館大学でデザインマネジメントの研究を行っており、西尾さんはこの出会いに運命を感じ、客員研究員として共同研究を開始します。
そして、現在も立命館大学デザイン科学研究センターDML(Design Management Lab)(http://dml-ritsumei.jp/)として、企業や組織に対してデザインの考え方を経営に活かすデザインマネジメントの知見を研究しています。大学発の新しいアカデミックな知見は世間からの評価を受けにくいものですが、そこに西尾さんらがジョインすることで、アカデミアの知見を価値あるものとして社会に提供し、収益に変えることを目指し活動を行ってきました。
このような仕組みづくりを行い、デザインマネジメントを広げて行きたい、そしてこの考え方を次の世代へとつないでいく。自分がやってきた道を明確に示して、新しい世代につなぐきっかけづくりを行う。新しい世代を育てて継承していく。こういった思いを抱いて働いて形にしていきました。
株式会社DMLとWhatever Shimogamo
また、ファイブ・シーズ社での現職は執行役員の西尾さんですが、執行役員は経営陣ではないため、会社経営に意思を反映させることは簡単ではありません。自分のやりたいことをやろう、デザインマネジメントで社会にアプローチしよう。こう思いたって、八重樫教授や宮崎COOとともに株式会社DMLを立ち上げました。研究員として立命館大学に所属しつつ、京都に株式会社DML本社を構えました。その理由の一つに、京都はまだまだ人と人の関係性からビジネスがスタートするという考え方が残っている、ということが挙げられます。
西尾さんは東京で働く中、東京で新しいものが生み出される可能性に限界を感じました。問題なのは東京のビジネスモデルが、特にアメリカを模倣しているところにあると、西尾さんは考えました。それは正しいものではなく、本来は日本人が持っているアイデンティティが大切で、そこから生まれるものに価値があるのだと考えました。新しいものは、人と人の間にあるのではないかと考えたのです。これを自分の生活の中で体感したい、ゆえに京都に帰ることを決めました。
Whatever Shimogamoを見つけたのは偶然のことでした。法人化後、烏丸近辺でオフィスを探していたのですが、宮崎さんに「郊外を探してみない?」と問いかけ探した結果、弊社の施設に辿り着きました。そして、即決されたのです。
Whatever Shimogamoへの想い
「ここは最高だよ。」と、西尾さんは述べられました。
Whatever Shimogamoには西尾さんが理想としていた環境がありました。それは、場所を通してコミュニティが形成され、コミュニティの中で信頼関係からビジネスが成立し、まわっていくというものです。
「ここでは自分の理想が体現されている。(入居者の)みんながそれを意識的にやっていないのがすごいことだ。」とおっしゃりました。
Whatever Shimogamoが成し遂げているコンセプトの体現は、山本耀司さんの言葉にもつながります。
「有機的にそういう人たちがつながっている心地よさが確かに存在しているのもいい。その前提として入居者の方全員がしっかりとした倫理観を持ち、一人ひとりが独立していることもいい。」こう述べられました。
そんなwhatever shimogamo内の他の入居者の方や弊社楪葉・土屋と協働して、とあるプロジェクトを行っています。まさに、西尾さんの理想とする、人と人の間から生まれたビジネスですね。
京都への想い
現在株式会社DMLでは、中小企業の社長への経営コンサルテーション及び大企業の新商品開発や新規事業開発、人材育成などのブランディングやイノベーションを中心に事業を行っています。経営者は常に孤独です。彼らが自分で決めなければならないところに、アカデミアの知見をもって直接寄り添えるように取り組まれているのです。
西尾さんは、京都にはまだまだ眠っている資産があるとおっしゃいました。現在、京都は外からみると観光の街ですが、観光は「過去を体感するもの」でしかありません。京都には、昔ほど名の売れた企業があまり存在しません。また、経済性、社会性、文化性の三つの視点で京都を見ると、今の京都は観光に特化した経済性だけに目が行き過ぎていると感じられています。
社会からの要請に対して京都のあるべき姿、すなわち京都のパーパスを考えることがこれからの京都に必要なのではないかと考えられています。「そうだ、京都いこう。」というJRのキャッチコピーがありましたが、「そうだ、」の前には行間があります。ここに、なんとなくみんながいいなと思う京都、日本人のアイデンティティが存在するはずだと西尾さんは考えています。
京都の持つ暗黙知を今の時代に合ったカタチに変えていく。
表面的な話ではなく、オリジナルな価値を。観光の街・京都を全面的に売り出すのではなく、文化性・社会性の暗黙知をベースにして見直し新たな価値を出す。これが京都に必要なのではないかと考えられています。自分たちの解釈を外殻につくる、これは京都のリブランディングにつながるのです。
さらに、この思考を発展させ、京都とパリ、ミラノ、台南といった歴史的な街でありながら観光だけで終わっている街を見直し、相互に繋げていきたい。世界的な流れを作っていきたい。こう考えられているのです。
西尾さんの価値観
さて、西尾さんの仕事における価値観・人生における生活観をお聞きしました。
この二つは共通のもので、相手が一番大変な時にそばにいられるかということです。
相手の問題を自分事として話をすること。
声をかけること、何も言わないでそばにいること。
こういった求められることは人によって異なりますが、これから逃げずに寄り添っていく。自分のできることは最大限必ずやり抜く。こう決めて生きているのです。こうした人生観の西尾さんが、人生で大切にされている言葉は、あらゆることに対しての「感謝」です。納得です。
今後やりたいこと
最後に、今後の人生でしたいこと・やりたいことをお聞きしました。それは、デザインマネジメントの考え方中心で行う「音楽」とのことです。私もこれを聞いて、どういうこと?って感じました。
西尾さんはこう語ります。
「人間は、今は言葉で知見を表現している。これを音でつなげていくんだ。
これまでにない音に想いを乗せて伝える。これまでにないけど、聞いたら『ああ、これこれ!』ってなる音があるはずなんだ。」
言葉では、伝える側と解釈する側の能力に限界が存在しますが、音は聞いた人の「世界」を変えられます。何でもない日常を非日常に変えられます。つまり、音は人間にとって感覚的に伝わりやすいものなのです。
「賀茂川の音、鳥のさえずりを聞くと落ち着くよね。」そうおっしゃいました。
世の中には既にいろいろな音があるが、音でまだ取りこぼされている音、見落とされている音がまだあるはずなのです。
我々には、世の中で培われてきたものが音だというバイアスがかかっています。そのバイアスを取っ払って、まだ世にでてきてないものを見つける。意識や言葉は「こう」なったら「こう」なる世界をつくるものですが、世の中は「こう」なったら「こう」ならない予測できないものです。
そのため、アカデミアの知見をもって、「新しいことへの取組としてやっていきたい。これまでにない音を探求したい」、と考えられているのです。
最後に
以上、西尾守史さんでした。デザインの世界から社会を捉え、常に自分に問を投げかけ続けてきた西尾さん。皆さんに彼の原点を感じていただけたら幸いです。これから西尾さんが目指す、音での世界の表現、とても楽しみですよね。
インスタグラムでも西尾さんを紹介させていただいております。よろしければご覧ください。
西尾さんとお話ししたいという方はぜひWhatever Shimogamoにお越しください。
株式会社DML HP
立命館大学DML HP
株式会社ファイブ・シーズ
その他の入居者の記事はこちら
https://whatever-produce.com/member
次回の入居者様のご紹介もお楽しみに。